忠臣蔵作品としては珍しい女性(瑤泉院)が主人公の作品。タイトルに「陰謀」と入っているもののドロドロした嫌な印象は無く、実際の内容は非常にドラマチックで切なく泣ける名作に仕上がっている。 物語は討ち入りから随分と時が流れた後から始まり、そこから回想に入っていく演出が秀逸。その回想の節目で映し出される百合の花の描写が何とも美しい。
今作の大きな特徴は、有名な「恋の絵図面取り」のエピソードが岡野金右衛門ではなく毛利小平太に置き換わっている点。さらに近年の風潮を反映してか吉良上野介の悪役要素はかなり抑えめになっており、全体的に穏やかな気持ちで鑑賞できる。 映像作品ではスルーされがちな赤穂浪士の遺児たちにもスポットが当てられており、伊豆大島へ遠島処分となった4人の遺児がしっかり登場するなど、史実へのリスペクトと意識の高さを感じる。討ち入りシーン自体も史実に沿った描写が多く見られ、様々な視点から楽しめる非常におすすめの一作。
そして何より珍しいのが、千馬三郎兵衛さん(の娘)が登場する点! 娘が吉良邸へお給仕として潜入し探りを入れるのだが、吉良左兵衛さんに見初められてしまう展開が甘酸っぱくてたまらない。お花をプレゼントする左兵衛の若々しく純粋な当主っぷりがかわいくて、敵同士の切ない恋模様に胸がキュンとする。しかも討ち入り後、千馬の娘は左兵衛の配流先である諏訪までお供している!史実ではあり得ない完全なオリジナル展開だが、この敵味方の切ないロマンスは非常に魅力的。
ただ一点だけ勿体なかったのが、瑤泉院に姉妹がいる設定で、最後の夜に大石内蔵助へ抱かせてあげる(しかし実はすり替わっていて本物の瑤泉院だった)というシーン。主君の奥方様と一夜を共にするなど武士としてどう考えても罪悪感しか残らないはずで、そこだけは不要な演出に思えてしまう。
とはいえ、全体としては女性目線の語り口と史実要素、切ないドラマが融合した見応え抜群の忠臣蔵ドラマだった。
