2024年 八犬伝

3.0
役所広司  149分  映画

※八犬伝であって忠臣蔵ではないけれど、まあ忠臣蔵に絡むので備忘録を残します。

役所広司がいつもに増して天才すぎて、感情を揺さぶられまくる作品。

実の世界が虚(物語)とかけ離れているからこそ、実の苦しみがより一層重く突き刺さる。そしてそれを浄化するかのように、実の馬琴を通して八犬士たちが虚を以て救いに来てくれる描き方が見事。
原作未読だけれど、山田風太郎の原作がすごいのか、映画の構成が素晴らしいのか……

全編を通して揺るぐことのない「虚・実」という主軸が置かれていることで、創作上・生きる上での葛藤を常に投げかけてくる。
馬琴にそれを強く考えさせたのが鶴屋南北との対峙で、『四谷怪談』と『仮名手本忠臣蔵』を利用した表現には脱帽!
脱線するけれど、立川談志師匠の名言に「落語は四十七士は語らない。逃げた残りの253人がどう生きたかを語るもの」という言葉がある。今回、鶴屋南北役の立川談春師匠に「四谷怪談が実だ」と言わせ、馬琴を論破して絶句させた奈落での出来事は皮肉が効いていて素晴らしい!まさに大喝采 👏✨

そして渡辺崋山が登場することを知らされていなくて驚いた!北斎と南北だけでも既に豪華なのに、マニアックに崋山まで出し、しかも彼の言葉に馬琴が救われている。そんな鍵になるセリフを残す人物を陰にしたことも不思議なくらい、実の世界の濃度がすごい。
宗伯の没後に遺体の顔を触って描いた逸話を持つ崋山を意識するように、作中で宗伯の肖像画が掛けられているのもこだわりを感じるポイント。

ラスト、虚に招かれながら没していく役所広司の演技に心の底から震えた……大喝采!! 👏😭