原作を事前に読んでから観たため期待値が高く、独自のアレンジも多かったので個人的に少し残念に感じる部分もあったけれど、作品全体としては一話一話とても丁寧に作られていた印象。
特に印象深いのは、主人公・きよと吉良上野介の妻・富子様とのやり取り。敵の妻でありながら心を通わせる会話の数々には毎回泣かされてしまった。吉良=完全悪というステレオタイプなイメージを抑える役割を果たしていて、物語に深みを与えている。 ちなみに討ち入りシーン自体は作中では直接描かれず、12月の放送回に合わせて吉良邸の門前で赤穂浪士たちの討ち入りをそっと見守る構成にとどめられている。このあたりの「討ち入りそのものを直接映さない」アプローチや、毛利小平太が雪の中で息絶えている描写などは、どこか『薄桜記』を彷彿とさせる雰囲気(薄桜記で雪の中倒れるのは毛利ではないけれど)。
一方、少し悔やまれるのが第一話の「餅と蜜柑」のエピソード。物語の序盤で赤穂浪士たちに餅と蜜柑を配るシーンから始まり、討ち入り回で再びその回想が入る演出は良かったものの、原作や史実でこれを行ったのは甚三郎。今作で甚三郎の存在が丸々カットされてしまったのは本当に残念!映像化された忠臣蔵作品で甚三郎が登場した例が過去にないため、今作で初の映像化になるかと期待していただけに惜しいポイントだった。
とはいえ、映像作品では滅多に取り上げられない「遠島処分になった赤穂浪士の遺児たち」のその後に触れられていたのは好印象。前半展開も含めて、赤穂事件の史実の全体像をざっくりと掴むのには打ってつけの作品と言える。
余談だけれど、脚本家の方が中央義士会で史実を徹底的に勉強されたという話にも納得のこだわり。「きよ(後の月光院)が浅野家に仕えていた」という有名な説があるけれど、実際は月光院の義姉が浅野家に仕えていた…という細かな歴史背景の補完も含めて、忠臣蔵ファンとして見ごたえのあるドラマだった。
