主人公は近松門左衛門、準主人公は大石内蔵助。忠臣蔵ではないけど「赤穂塩」を広めるために奮闘する物語。内蔵助が出るし赤穂の話が軸となるので記録しておきます。 結構酷評しちゃいますのでご注意!
まず内容が硬すぎて、恐らく一般人にはかなり難しい。この話に付いて行ける人は、「江戸時代の知識がある人」という印象だった。教科書基準にすると「日本史B」の江戸周辺を隅々まで深く勉強すれば分かるレベルだと思う。一体誰向けの話なのか?忠臣蔵の影響で江戸に興味を持っている自分が辛うじて付いて行けるレベル。見に来ているお客様は役者さんのファンの方が多いと予想されるので(近松と内蔵助がジャニーズJr・ラサール石井さんなども出演)、 コアなファンは会場には中々いらっしゃらないと思うし、それも予想できたことだし、「頑張ってついて来いよ」姿勢ではなく全体的に脚本をどうにか柔らかくした方が絶対よかったって。隣二人のお客さん、寝てたもん。
ストーリーも盛り上がり所は一体何処だったのかさっぱり。気合を入れたところは「スペイン歌舞伎」と仰っているので恐らく歌舞伎をスペイン語で演じたシーンだと思うのだけれど、盛り上がりに欠けていた。それに、見せ所と思われるこのシーン、観客は笑っていた。笑わせるシーンが見せ場だった…?スペイン歌舞伎という発想は面白いけど、これスペイン人向けじゃん、日本人が見てもスペイン語分からないしピンと来なかった。
そして「悪役の存在の薄さ」。これが一番の失敗の原因なのでは。悪役は吉良の間者。一応、後の忠臣蔵に繋がることを意識して、主人公は近松でも、悪役は吉良方設定。塩作りの技術を盗むため赤穂に吉良の間者が入り込む話は他にもあるし、これはこれでとてもイイのだけど、2時間中この悪役が悪役していたのは5分にも満たないと思う。存在が薄い。悪役成敗シーンも殺陣がせっかくカッコよかったのにBGMが大音量の砂嵐か滝のような音のみで台詞無し・刀の当たる音無しであまり満足いく見せ方ではなかった…。何か全体的に役者さんが可哀想に思えてきた。
段々芝居に興味が出てくる門左衛門、考えた話を内蔵助に聞かせるのだけど「この世のなごり、夜もなごり─」と言っていて、ここは演出がシンプルにきれいで結構泣きそうだったのだけど、これが「曽根崎心中」だと分かった人は数人しかいないと思う…。私はたまたま知っていたからホロッときたけど多くの人はこれが曽根崎心中の始まりだとは気づけないだろうしあまり印象に残らないシーンとなったと思うので勿体ない。物凄く勿体ない。だから一体誰向けの話なんだってば。
↓ここからは勘六さんの大ファンの私しか抱かない感情だと思います。↓
原作は、前々から存じ上げていた本。「口伝解禁 近松門左衛門の真実」。何故知っているかって、近松勘六さんが出てくるからね!!勘六さんは門左衛門さんの義理の甥っ子。これがフィクションならものすごく面白い。でも実はこの本に書かれていること全て「ノンフィクション」としているため、ちょっとトンデモ本扱いされがち。 私も直接とある研究者に滋賀の近松さんの御実家にもこの本に書かれている内容と合致する言い伝えや記録は全然見つからないし、「ありえない」と言われたこともある。信じるなとは言わないけど、私は「フィクションだったら楽しいね!」と頭の片隅に置いているくらい。そう、フィクションなら面白くなる話だと期待して、観に行ったのだけど、残念過ぎた。公式が公演前に勘六さんのお名前出して説明してたから更に期待したら本公演で門左さんと勘六さんの繋がりの話スルーじゃんか!!カットするならさあ、あの話する必要なくない?無駄に期待させられたよ!あの公式の公演前の勘六さんの話に釣られて見に行くこと決めた人は絶対私だけだけどさあ!ショックデカいよ!8500円出してもう一回見に行こうとは思わないなあ~!もうさあ、門左(20歳~30歳)と内蔵助(14歳~24歳)の若いころの話だから、勘六さんは3歳~13歳の頃の話だし、出てくる可能性は限りなくゼロに近いとは思っていたけどね、「後に内蔵助は~」的なナレーション入れて四十七士の討ち入り事件の説明をして、「その中には近松門左衛門の甥っ子にあたる人物もいた」的な感じで勘六さんの名前チラッと出してくれるだけで満足したよこっちは!喜ぶのは私だけだけど! 唯一救われたのは「琵琶湖」と「近松伊看(=勘六さんの祖父・これは本当の話)」のワードが劇中に出てきたところ。滋賀に縁があることは変わらないので!
↑ここまでは勘六さんの大ファンの私しか抱かない感情だと思います。↑
散々酷評したけど、私の趣味分野には縁のないスペイン関連のお話が出てきたので、BGMがスペイン風?民族音楽風でカッコよかったし、思い切った「男オンリー!色恋の話はノー!」な所は清々しくて良かったと思います。