2019年 決算!忠臣蔵

4.0
堤真一  120分  映画

小説版(原作ではない)を先に読んでから本作に挑んだ人による感想です。令和初の忠臣蔵はお金のやりくりのお話。俳優が豪華で、珍しいキャラがキャスティングされていることでずっと注目していた作品。「忠臣蔵」といってもいつもの定番シーンは殆ど無いし、敵は吉良ではない。身内だけのドタバタ劇。先に小説を読んだ感想を書いていたので、それに沿って感想を書いてみようと思います。まず注目していた人物に対しての感想になります。

近松さん

※近松さんに注目して映画を見ていたのは自分だけだと思うけど御贔屓さんなので許してね。

3月にキャスト発表第二弾と映像の一部の発表があったけど、その時点で菅谷さん(妻夫木さん)の後ろに近松さんの家紋がついた裃を着ている方が見えたので実は期待していたのだけれど、見事あの方が近松さんだった。どうもありがとうございました…。3回は喋るだろうと思っていたけど、なんと!4回喋った!しかもかなり最初の方に喋った。やるではないか決算忠臣蔵・・・。小説での台詞も言い回しは少し違ったけれど全部近松さんが喋ってくれていた。亡君の法要にも来ていたし(しかし何故か彼だけ裃姿ではなかった(★1))、吉田&近松ペアが拝めたし!!感動!勿論吉田さんがメインキャストのため、近松さんがお供になっていることはさり気無く描かれているけど、それでも近松さんが吉田さんの後ろに控えている姿を拝めるのは貴重。細かい史実設定も意識されていて、近松ストーカー人間にとっては嬉しいシーンでした。ちょっとこれはねえ、見間違いかもしれないけど、近松さん、安兵衛の肩にポンと手を置いていたか…?時間の都合上今は二回目を見に行くことができない為、要確認(★2)。今回本番の討ち入りシーンは無いけど、演習的な意味で想像上の討ち入りシーンがあったけど、そこでも結構近松さん見つけたし、割と前の方にいたなあ。菅谷さんの近くにいることも多いし、メインキャストの脇を固めていた。最高。 「元禄繚乱」のマギーさんに続いて、「決算!忠臣蔵」のBOBさん。近松さん、たまにキャストでとても目立つ(笑)。

★1…よく見たら重臣達だけ裃姿で、エラい人達のお側に控えているだけだった。近松さんスゴい?
★2…2019.12.14に2回目見ました。多分、位置的に肩ポンしてた気がする。

菅谷さん

「新しい忠臣蔵」作りに抜擢された菅谷さん。予告映像に裏切られることのない兵学オタク設定だった。小説でもメインの割には最初と最後の方にしか出ないのか、と思っていたけど、映画では更に出番が減っていた。でもまあ、後半はほぼ菅谷さんのターンだったしあのキャラ嫌いじゃないのでOK。「討ち入り(戦)には兵学が重要→赤穂の兵学といえば山鹿素行→山鹿兵学の免許皆伝を持っているのは菅谷さん→しかし兵学にはお金もかかる」。後半はこれに注目してわざわざ菅谷さん出してきたのは本当に意外だった。しかし菅谷さんのターンは一番笑える場面になっていた。免許皆伝を持っているのが菅谷さんだけというだけで、四十七士含め、赤穂藩士には結構兵学オタクがいたから、正直兵学担当は彼を持ってこなくても何とかなりそうだけど、敢えてしっかり彼を使ったのは拘りを感じた。今回の菅谷さんみたいに、今後の忠臣蔵は定番キャラに加えて、あまり注目されてこなかった人たちを、一作品に1~2人くらい追加していくと面白いと思うなあ。本伝よりも銘々伝好きの人間による考えだけど。

大高さん

一番キャラの変更が大きかった。今回のゲンゴは濱田さんが適任者だったなあ。やっぱり長助より目立っていた気がする。文人らしさを出したいから頭巾を被らせる為に、髪形を工夫したとのことだったけど(波平さんみたいになってしまったと監督は言っていた)、ん~~私はオーソドックスな月代とかが好きだな。後ろのポニテが気になった。頭巾被って正面から見れば普通だし可愛いけど。それにしても、彼は討ち入りしたくない派という設定だったから、茶会と俳句だけあればそれでよくて、剣術なんか無理ですという雰囲気があった。物凄く元禄を生きる人間らしかったから、長助が斬られたシーンでは恐怖で叫んでいたけど、この濱田さんの演技には驚いた。元禄を生きる平和な人間が突然辻斬り現場を見てしまいました感が出ていて濱田さんの役者魂を感じた。でも大高さんレベルの定番キャラだと今回のキャラ崩壊には違和感を覚えた人もいたみたい。私と一緒に映画見た人がまさしくそう。というのは、ある程度忠臣蔵を知っていると、「大高さんは討ち入りしたい人」という印象はちゃんとあるようで、映画を見終わった後に「ゲンゴはああいうキャラだったの?」と再確認された。今回濱田さんだったから声も高いしちょっと気弱そうな表情で、歩き方が可愛かったし、アレは完全に濱田版大高源五。ただ可愛いだけのゲンゴ。

貝賀さん

史実無視で動かされたのは大高さん・貝賀さんでしょう。貝賀さん、バリバリ苦労人だった。小説版で書いた通りの感想かな。ただね、神文返しで大高さんに釣られて彼も大石さんの悪口言うところ、アレは笑った。会場はそんなに笑いが起きなかったけど。最初は大高さんに引いていたけど、結局大高さんより酷いこと言っている、と思われる(放送禁止用語により聞けない(笑))。貝賀さんは、昔 山田風太郎の「俺も四十七士」を読んでから何だか不憫で可哀想という印象が拭い取れずにいたから、今回こういったキャラで目立ってくれて救われた感じがした。

和助さん

和助さんが小説ほど出ないことは映画前に、トークショーのレポートを見て確認済みなので小説版の感想ほど沸き上がるものは無い。あのレポートには一言も「和助カット」とは書かれていなかったけど、察してしまった、この書き方的に和助はカットだと。これを知って和助ショックが起きて見る気力ダウンしたくらいショックがデカかった。これで近松さんが出なかったらショック死だったので近松さんが出たことで救われた。しかし!菅谷さんが大好きな神崎さんとのペアでお名前呼んでくれたから!!!OK!!!もう感謝!OK!セットでお名前聞けたの!!OK!100点!しかもお前ら二人並んで座ってるんかーい!満点の並び方だった。これなあ、小説だと、大石さんが神崎さんに対しては「金ねえんだぞこの野郎」と思っているのに和助さんには不憫な人ということで目にかけてあげていて、二人の描写の違いが面白いんだよなあ。 でもエンドロールしっかり見ないと確信持てないくらいチラッとなんだけど、傘づくりしている浪人姿は、あれは茅野家を映してるんでしょうね、あれを見てグッときた。細かいけど、ちゃんと入れてるんだ…! それで、一番ショックを受けた、和助さんの実際の台詞を別の人が言っちゃう問題。(山本博文先生もココだけは気になったようで)。これは、島流し組が代わりに喋っていた。吉田伝内さん役の人かなあ…?四人の区別がつかなかったので正確に誰かは初見では把握できなかったけど、四十七士ではないメンバーが言っていた。

伝ちゃん

監督、前原さんと倉橋さんのシーン本当に泣く泣くカットしなんだな(笑)。だってチラッとしか出てきてない、寧ろ近松さんより登場シーン少ないのに本編でお名前テロップ付き(勿論近松さんにはありません)。もっと沢山出したかった気持ちが伝わってきた。やったじゃん伝ちゃん。前原さんとのセットなかなか楽しかった。「火事装束?そんなん、残してありますけど、何か?」みたいな討ち入り作戦に大いに貢献しているのに自覚していない二人がめちゃくちゃ可愛い!大石さんには偉い!好き!と思われているのに兵学オタク菅谷さんに叱られちゃうのも可愛い。

若者たち

和助さんの台詞を島流し組が言ってしまうくらい結構いいシーンということを意識されていた。彼らが討ち入りに参加できない理由を上手く作り上げていて、ココはやっぱり泣ける。生き残った瑤泉院の活動も視野に入れると、彼らを出してきたのも納得いく。ここら辺はオリジナル要素があっていいんじゃないかなあと思った。定八くん病死の事実は敢えてスルーなのは構成上仕方ないと思う。定八くんも分かってくれると思う。どうかな。

小説版で注目した人たちをまとめてみました。 他にも、りくさんね。りくさん史上最高に可愛いシーンがあって女の私でも胸が締め付けられるくらいキュンとした。いい年して大泣きしちゃうりくさんが可愛い。泣いてばかりいる女性キャラは好きになれないのだけど、これは竹内さんにやらせているし反則だなあ。昔の忠臣蔵だとあんな泣き方なんか絶対させないだろうから、新しい忠臣蔵シーンが垣間見られたかな!今回、恋愛事情は描かれない男ばかりのお話だったから女性キャラはあまり目立てなかったけれど、やっぱり、りくさんは忠臣蔵には欠かせないなあ。女性キャラは好き嫌いが激しく分かれるのだけど、これは安心して見られる。 総括しての感想。 「知ってる人も、知らない人も楽しめる予算エンターテイメント」と言っているけど、これは知らない人は付いて行けているのか不安になった。後半はほぼふざけているから誤魔化しが効くしちょっと分からなくても笑えるからまあいいか、となるだろうけど、中盤まではテンポよく忠臣蔵をアレンジしているから話がどうしても難しくなっている部分があると思うな。

見ていて、十数年前の忠臣蔵を意識して初めて見た時のことを思い出した。当初私は、なぜ突然上杉家が出てきて、討ち入りに怒り狂って応援に行こうとしているのか分からなかった。それと、忠臣蔵関係なく江戸知識の有無の問題だけど、お城明け渡しで唯七が何故怒って泣いているのかあまりよく理解できなかった。多分同じような現象が起きる人はいるんじゃないかと思う。そもそも、予告映像に「知らない人も楽しめる」ってあるのがもう昔とは全く違う。確実に作りにくくなっている。知らない人は多分昔の忠臣蔵を見るのが一番。今回のは知っている人が見る方が面白い作品だと思う。

次に、賛否が分かれそうな、討ち入りシーンのカット。一緒に見に行った人は、「やっぱり忠臣蔵には討ち入りが欲しかったなあ…」と言っていた。確かにそう思う。代わりにリハーサル討ち入りシーンがあったけど(笑)。でも、後半はふざけまくりだから、あの流れでクソ真面目に討ち入りするのもちょっと違う気がした。だから私は、「討ち入りできる?」と書いてあるけど実際討ち入りはやるのは誰もが分かっている事実なのだし、冒頭にクソ真面目討ち入りシーンやっちゃうのもアリかなあ、なんて思った。だってあのふざけた面子の真面目な討ち入り見てみたいじゃん(笑)