1910年 忠臣蔵

5.0
尾上松之助  90分  映画

現存する最古の「忠臣蔵」映画で、日本映画最初の全通しの「忠臣蔵」映画らしい。2018年に新しい映像が発見され、既存のものと繋ぎ合わせて最長版とした。印象としてはカメラワークが現代と違うため歌舞伎に近い。セットも絵を使っていたりするため尚更。特徴的なのは、落胆したり悲しむシーンではどのキャラも顔に両手を当てている部分。最近の作品ではあまり見られないし、どちらかというとこの仕草も歌舞伎に近いのかな~と思った。

今はカメラの引きやズーム等の技術がしっかり取り入れられているため視聴者に見せたいものを簡単に伝えられるけど、この作品や歌舞伎はそういう見せ方はしないため、様々な工夫がされていることに気づいた。立花左近が浅野家の家紋を見つけてハッとして全てを察するシーンがどの作品であれ大好きなのだけれど、今は家紋をズームさせればヨイだけだが、この場合は中々表現が難しいのだなと感じ、作る側の見せ方が如何に重要かよく勉強になった。主税くんのカツラが特徴的で最近はあまり使われていない髪型だった。南部坂雪の別れの女スパイがめちゃくちゃ強い。カッコイイとさえ思った(敵)。

通しの忠臣蔵だし、典型的な忠臣蔵なため無音でも大体今どのような会話がされているか分かるし充分楽しめた。蕎麦屋が階段から落ちる場面は一昔前のお笑いコントなみに勢いよく落ちてきて、体を張っているだろうけど笑ってしまうし、討ち入りでもちょっとアホな吉良家の家臣とのやり取りが面白く(←近松さん&武林さん)、ちょこっとギャグも入れてきていて非常に面白かった。明治の人が考えた真面目忠臣蔵の中のギャグ場面、と考えると作り手が遠い人のような感じがして不思議な気持ちだけど、今も昔も変わらないのだなあ。

基本的に討ち入り装束はお揃いだけど、少しずつお衣装が違うのが可愛くて大好きなのだけれど(襷の掛け方や帯の巻き方、羽織の長さ、袴の色やデザイン等)、今回珍しいと思ったのが何人かが虚無僧結びをしていたこと。あまり見慣れなくてとっても可愛かった。