1982年 峠の群像

3.0
緒形拳  全50話  TVドラマ(大河)

現代的な描き方をしているのが特徴で、「塩」を重要なポイントとしているドラマ。緒形さん演じる内蔵助さんが、時代劇の主人公という感じが出ていないところがいい。人間くさくてリアルだし、考え方も普通の人間。当時の元禄の人間らしさが滲み出ていて安堵感に包まれる。ビートたけしの内蔵助に通じるところもあるな~なんて思った。率直に好きな内蔵助でした。逆に理屈っぽくて武士らしさを感じる原さんを相方にして均等を保っている感じ。原さんは常にプンスカしていて真面目に見ている絵図面に内蔵助さんが昆虫乗せたときの反応が面白かったし、原さんもいいキャラしていた。プラス小野寺さんを加えていて、重要キャラになりやすい吉田さんを後半にちょっとだけしか出さないあたり少し珍しい。

重要な四十七士を結構絞っているため、オリジナルキャラ含む多くの人の人生を色んな面から集中的に描いている。恐らく制作側が狙って人気を出させようとした四十七士は片岡さん(郷ひろみ)と不破さん(小林薫)なのだろうけど、安兵衛さん(磯部勉)が一番好きでした。あまり出しゃばらない安兵衛さんだしちょくちょく敬語使ってくるし、中々好印象だった。相当郡兵衛想いな分、別れのシーンを蟠りが残りまくる描き方にしていて切なくなった。

吉良側では小林平八郎(寺田農)さんが怪しさのある藩を背負った大事な役で、チョイ役だけど超かっこよかった。清水一学さんや小林さんは討ち入り前にちょっと出ていたけど殺陣を殆どせず、最期が非常に呆気なくて物足りない感はあるけど、リアルさがあるしそれもまたイイのかもしれない。家臣団だけに関わらず吉良さまもいつもの忠臣蔵のように囲まれるのではなく発見してすぐ殺害されてしまう。吉良役で死体を演じた時間が長いのは伊丹十三さんじゃないかなあ(笑)。伊丹さんの吉良さまはほっぺが赤くて可愛かった。

女性キャラはダントツで柳沢吉保の側室町子(吉田日出子)がよかった。公家の女らしさのあるおっとりとした喋りでふんわりしていてかわいいけど考えていることは結構どぎつくて、そのギャップがヨイ。柳沢邸に動物がかなりいて、動物に囲まれながらの吉保とのやり取りも面白い。

全50話あるけど、タイトルが愉快なものも多くてとても楽しい。忠臣蔵に水戸藩関連の人物が出てくるのも珍しくはないけど、冒頭に光圀公の藤井紋太夫誅殺事件まで描いたのは意外だった。近松門左衛門も赤穂藩とオリキャラ達を繋ぐ人物として上手く出してくるし、ラストで三宅観瀾まで出すし登場人物がとにかく豊富だし、割と忙しい。

ストーリーではなく人物の好きな部分だけざっくりメモしたけど、重要キャラ一人一人が濃くて、サブの礒貝さんなんか正直訳の分からない立場になっていて可哀想だったんで出さないであげた方がよかったんじゃないかとさえ思った。全体的に色恋に関する部分は、じれったさがあるし結構引きずるし、りくさんも泣きまくるしもっと強い女性が欲しかったかなあ。町子はよかった(二度目)。でも終わり方が粋でした!拍手しちゃう終わり方。