2021年 元禄バロックロック

5.0
柚香 光・星風 まどか  65分  宝塚

宝塚による奇想天外な忠臣蔵ファンタジー作品。舞台は国際都市「エド」。江戸ではなく、架空の都市になっている。そこに暮らす元赤穂藩士の時計職人クロノスケ。 彼は「時を戻すことができる時計」を発明する。この時計を巡って忠臣蔵を掛け合わせたストーリーが進んでいく、なんともワクワクするお話。ざっくりいえば、タイムリープもので、「切腹エンド」を変えたいコウズケノスケの隠し子キラによる足掻きのループ。本来ならば歴史を大胆に改ざんし、武士が遂げた本懐を否定するトンデモ設定ではあるのだけれど、その違和感を全く抱かせずにストーリーを展開させたのが上手いと思った。メインはどちらも架空の人物だけど、だからこそいい意味で割り切れる。本来の忠臣蔵にはガッツリ介入しつつも、架空ならば固定概念が邪魔してこないから、感情移入しやすい。

※タイムスリップ系はゲーム(ChuShinGura46+1)、映像(タイムスリップ!堀部安兵衛)、小説(タイムスリップ忠臣蔵/オール・ユー・ニード・イズ・吉良)等がある。

1992年の宝塚版忠臣蔵は、正統派忠臣蔵に分類される。今回はテーマが「忠臣蔵ファンタジー」なだけあって、衣装がべらぼうに美しい。「エド」と「江戸」が似て非なる別の世界であることを、衣装や雰囲気で表現しているようだった。一見「忠臣蔵なのか─?」と思うけど、メインキャラは赤穂側と吉良側が出会ってしまったことがきっかけで人生が狂っていくという、実は「忠臣蔵あるある」な設定だった。大好物です。あるあるだけど、大きく異なる点は「ハッピーエンド」なところ。そして幕府側の絡みも重要になってくる。幕府(というよりショタな綱吉公)の動きがかなり大胆でいかにも舞台作品らしい。この綱吉の動き次第で事の顛末は大きく変わっていっただろうし、ハッピーエンドにはならなかったと思う。綱吉役は娘役だったのでとってもキュートで、非常に歌がうまくてキャラ立ちがえげつない。怒るとドスの効いた声になって、ダンディな吉保を叱りつけるという二人の関係が可愛らしい。

クラノスケはのらりくらりとしていそうで、実は抜け目がないという、彼の重要ポイントを押さえつつ上手く主役を立てる脇役に回っていた。四十七士は、配役や相関図では結構出てきていることが分かる。劇中で名前が出てきたことで誰だか分かる人がヤスベエとチュウザエモンさんだけだった。でも今回のメイン二人の設定が私好みだったので、イイ脇役かなあと。そして彼らの討ち入り衣装も非常に、非常に美しい…。コウズケノスケもイケオジで歌もかっこいいし髪型も好み…。浅野内匠頭の一人称が「僕」だったのは意外。

どハッピーエンドの忠臣蔵ファンタジーだったけれど、意外と忠臣蔵を踏襲している部分も多く、そこに舞台ならではの解釈、ミュージカルらしい派手な演出が絡み合って大変良かった。宝塚は一本ものを観ることが多く、演劇後すぐフィナーレでエトワールが来た瞬間に再び激しく興奮していたのだけれど、今回はショーも楽しめた!しかも長かった! 92年版も読売シーンの歌が大好きだけど、今回もエドの人間が勢揃いのみんなで歌っていた曲がグッときた・・・音源欲しいし覚えてカラオケで歌いたい(´;ω;`)