市川段四郎 87分 映画
新発田から始まる安兵衛物語。といっても定番の決闘高田馬場を準えたお話。特徴的なところとして、安兵衛の新発田時代の旧友に「俵星玄蕃」が出てくる。何故彼なのかはよく分からなかったけど、ただの架空の人物よりは馴染みのある架空の人物の方が面白みがある。
決闘までは「喧嘩長屋」の住人たちと共に、水茶屋の娘お照を助けるために十三両を集めに奔走するお話を追加している。世話物感が強く楽しく見られる。お金を借りた相手が菅野叔父で、その再開を経て決闘に繋がっていく。女たちを荷車に乗せて決闘に向かう安兵衛を追いかける喧嘩長屋の江戸っ子たちの絵も楽しくてお茶の間でゆったり見ていたくなるような、そんな物語。
ただ銀次とお北の夫婦は好きだけど、スリをした銀次のせいでお光が安兵衛からプレゼントを貰ったと勘違いして最後まで報われないのが可哀想だな…。
最後にしごき帯を渡す堀部親子が出て来て、堀部になる安兵衛が長屋に別れを告げるところで終わる。お光が別れ際に下手な字で安兵衛に手紙を渡して、これから「堀部」としての人生が始まっていく晴れ晴れしくも切なさが残る場面が印象的。
色々見て来て気付いたけど、この安兵衛は段四郎さんだけど、この家系の人が演じる高田馬場モノの特徴として、「旧友」が出てくるね。(2006年のパルコ歌舞伎)