1957年の「大忠臣蔵」の大石東下り場面までを「假名手本忠臣蔵」(前編)、その他新たに脚本を加えて公開されたのが「義士始末記」(後編)。
假名手本忠臣蔵(前編)
冒頭が文楽の場面になっていたりと少し変わっているところはあるけれど、1957年の大忠臣蔵と大きく変わるところはなく、こざっぱりと再編集された作品。大石東下りで終わるので「あっ…終わっちゃった!?」という声が漏れちゃう(笑)。
義士始末記(後編)
こちらは新たに「荻生徂徠・間新六の姉 おかつ」及び「中村勘助・おしま」に焦点を当てたオリジナルストーリーが加えられている。けどまあほぼ荻生徂徠(島田正吾)とおかつ(岡田茉莉子)サイドで、中村・おしまは無くてもいいくらいあっさり。これから名前を売っていくんだろうなあ、と感じるくらいちょこっと。でも息抜きとしてはいい味出してるかなあ。
実際の新六さんも頼る当てがなくてしばらく姉を頼っていた事実を踏まえると人選的には納得がいきます。でも、喜兵衛さんが芸者に産ませた子という設定になってるのは…😵💦
…とまあ色々ツッコミどころはあるけれど、この時代に荻生徂徠基、儒者をメインにした忠臣蔵が作られたことに驚きを隠せない。大抵の忠臣蔵では儒者は最後の最後に少しだけ出すだけなのに。
苦難するも、周りに左右されずに儒学者としての考えを貫き通す徂徠の見せ方、それを上手く利用した腑に落ちる終わり方にはスッキリした。身内を亡くした人間・外部の人間・男女の違い・身分の違いによって感じ方は変わるだろうけど、落としどころが上手くまとまっている。まあ、謂わば忠臣蔵外伝。
視覚的にもキレイで、おかつが弟の手紙を読む前の「恨み」によって見た悪夢の踊り(鷺娘の地獄の責め苦っぽい?)がまたおどろおどろしくて素晴らしい。岡田茉莉子さん本当にきれい、うっとりする。
全体的に真面目路線かと思いきや、江戸庶民が幕府に四十七(六)士の助命嘆願するデモに近い大騒動を入れたり、様々な宗派や駕籠屋、集団が出て来て赤穂贔屓で助命祈願する面白い場面もある。「義士を助けるには念仏しかない」「南無妙法蓮華経」「ばかもの、南無阿弥陀仏だ!」と、それこそ連獅子の間狂言のような可笑しいやりとりがしばらく続いて楽しい。
ただ、「仮名手本忠臣蔵」をベースに描いた大忠臣蔵の使いまわし(?)もあるので、この作品が「四十七士」として扱っているのかそれとも「四十六士」なのか、バラバラでどっちつかず。