1981年 忍びの忠臣蔵

3.0
萩原健一  90分  TVドラマ

まず、荒木が刺客を放つという設定自体が珍しくて、そこが個人的にはけっこう好き(笑)。

そして何より印象的なのが、吉田さんのナレーション。最初はあまりに感情がこもっていなくて、今の人が聞いたら「ゆっくり」が読んでるのかと思うくらい無機質。でも、最後の最後で、突然その声に感情が宿る。

「赤穂事件なんか、私には本来まったく関係ないのに、どうして夫は何も言わず、あの世界に関わりに行ってしまったのか。結局、私は夫にとって、何だったのか――」

そんな彼女の思いがあふれ出すラストのナレーション。あそこで初めて感情が乗る演出は、まるでこの作品全体が伝えたかったこと――男たちの大義の裏で置き去りにされた人々の思い――を、無関係なはずの妻にすべて背負わせているように感じた。

あとは比較的、オーソドックスな忠臣蔵の流れを踏襲している印象。