1990年 忠臣蔵

5.0
ビートたけし  220分  TVドラマ

今までにない忠臣蔵。討ち入りをしたくない、パッとしない内蔵助さん(ビートたけし)。解釈が斬新なのに、「定番忠臣蔵」をベースにしていて、筋が通っているため、「トンデモ物語」なんて思わないし、すんなり入り込める。ちょっと刺激の欲しい忠臣蔵ファンにはもってこいな気がする!

みんなが想像する内蔵助像といえば、堂々としていてみんなのリーダー的存在だけど、この内蔵助さんはボソボソ喋るし、誰に対しても大体敬語、目下の者にも「さん」付け、妻に疎まれる。

彼だけでなく、みんな言葉が柔らかく、時代劇独特の堅い作りにはなっておらず、現代的な部分を感じる。大野九郎兵衛さんがよく出てきて、彼がしっかりしている。よくよく考えると、彼は人間らしく、元禄人らしい、ごく普通の人だと思う。忠臣蔵では悪役だが、むしろ彼の考えの方が普通なのだと感じさせられる貴重な作品。大野さんは刃傷事件が起きなければ「有能な人物」で終わったに違いない。ただのんびりしたかったのに討ち入りさせられてしまったた内蔵助さんと、討ち入りさせないよう努力して結局無駄に終わってしまった大野さんとが上手く絡み合っていて、ラストは虚無感に苛まれる。スカッとはしない物語だが、本来のよくある説を利用して上手く裏を返しているから、合点がいく部分が多々有り、面白い。